おらげの婆ちゃんの名は”ツル”という。

みんなは「おづるさん」とか「おづる婆っぱ」とか呼んでいる。

同じ村に山仕事の「キサやん」がいて婆ちゃんといいコンビだ。

そのキサやんが朝方、仕事の道具を入れたカゴを背負ってやってきた。

オレの顔を見っと、地下足袋のこはじを直しながら言った。

「ぼうず、父ちゃんはどうした?」

「ハア、田んぼさ行った」

「そうが!こんだ耕耘機買うらしいなぁ!田んぼもはが行ぐべ」

「うん!」

土間に婆ちゃんが出てきて言う。

ふんでも、耕耘機はガスリン入れねどインジン掛がんねらしいな」

「そりゃそうだ。自分にばっかし油さしてもダメだ。

そうだごどかっちゃべってキサやんは大股で林道を登って行った。

 

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おらげ(おらち)=自分の家

こはじ=こはぜ

田んぼさ=田んぼへ

こんだ=今度

はが行く=仕事が進む

ふんでも=でも

~ばっかし=ばかり

そうだごど=そんなこと

かっちゃべる=しゃべる

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※こはぜ…留め具

※耕耘機…畑を耕す機械